- バフェットの思想は「良いビジネスを妥当な価格で長く持つ」。
- 見た目の割安さより、資本を増やす力(ROIC・再投資余地)を重視。
- 個人投資家は、チェックリスト化→分散しすぎない保有→長期の規律で再現できる。
1. バフェットは“安い株”ではなく“良いビジネス”を買う
バフェットの進化は「純粋バリュー→質の高いビジネス×合理的価格」
“PERが低いから買う”ではなく、競争優位(堀=Moat)・経営者の資本配分・長期需要を優先します。
数字より先に「仕組み」を見る
- なぜ儲かる? … 価格決定力・スイッチングコスト・ネットワーク効果
- 誰が配分する? … 経営の合理性(配当/自社株買い/設備投資のバランス)
- どこに伸びる? … 再投資できる市場余地、または余剰資本の高効率還元
2. まず“避ける”から始める:失敗確率を下げる3ルール
- 理解できない事業は買わない(説明できないビジネスは保有禁止)
- 借金依存の超ハイベータを避ける(不況での希薄化・倒産リスク)
- 短期テーマ株を追わない(テーマよりキャッシュ創出の持続)
【メモ】“勝ち続ける”のは難しい。“負けにくい”を積み上げる方が再現性が高い。
3. バフェット式チェックリスト
| 観点 | 見るポイント | 基準の目安 | 自分のメモ |
|---|---|---|---|
| 競争優位(Moat) | 価格決定力/切替コスト/ネットワーク効果/ブランド | 少なくとも1つ強固な堀 | 例:◯◯はスイッチングコスト高 |
| 資本効率 | ROIC(税後)>資本コスト?CF創出の安定性 | ROIC>WACC を継続 | 直近5年平均◯% |
| 再投資余地 | 成長市場/新規投資のIRR/拡張余地 | 高IRR案件に資金投入可能 | 投資計画あり/なし |
| 経営者の資本配分 | 配当/自社株買い/投資のバランス・希薄化の扱い | 株主本位・希薄化を嫌う | 過去の実績を要確認 |
| バリュエーション | FCF利回り/EV倍率/逆DCFの前提妥当性 | “合理的な価格”か | 逆DCFで成長率◯%想定 |
| 下落耐性 | 負債比率/契約の景気感応度/価格転嫁力 | 不況期も黒字・CF確保 | ストレス時の想定必要 |
4. 「買う前に、10年持てるか?」——保有と売却の規律
バフェットは集中×長期を徹底。売却の主因は「想定の破綻(競争優位の毀損・配分の劣化・構造変化)」で、“株価だけ”では動かない。
ルール化するとブレない
- 買付:チェックリストの合格率が閾値(例:6/7)を超えた時のみ
- 追加:想定が強化された時に限る(下落理由が“業績外”で一時的なら検討)
- 売却:Moat崩壊/資本配分の質低下/逆DCFが過度楽観に依存
5. バリュエーションは“逆DCF(バックワード)”で現実に引き戻す
逆DCF = 現在株価から逆算し、暗黙の成長率や利益率が妥当かを検証する方法。
期待が理想に寄り過ぎていないかを数分でチェックできます。
ワンポイント式(定性→定量の順)
- Moatと再投資余地で“質”を確認
- 現在株価→逆DCFで内蔵成長率を推定
- その前提が現実の投資案件(IRR)や市場規模と整合するか照合

“割安株を探せばOKですか?”

“割安さは“結果”であって“原因”じゃないよ。
まずビジネスの強さ(Moat・資本効率・再投資余地)を見よう。
それが強ければ、“合理的な価格”でも長期で勝ちやすいよ。”
6. “分散し過ぎない”のがポイント:バフェット流ポートフォリオ
- 最良の数本に厚く張る(ただし個人は生活防衛資金&分散の安全域を確保)
- コア/サテライトで設計:
- コア=Moatの厚い長期保有
- サテライト=検証中の小口、学習枠
- 家計側の安全資金(半年〜1年分)を先に確保
- コア:3〜7銘柄目安/サテライト:学習や検証の小口
- 四半期ごとに逆DCFとMoat点検→“想定の破綻”がなければホールド
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 評価 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 売上成長率 | ⬆/→/⬇ | 成長源は?価格/数量/為替 | ||
| 粗利率 | 改善/悪化 | 価格決定力の変化 | ||
| 営業CF/フリーCF | 潤沢/不足 | 在庫・債権増減の要因 | ||
| 資本配分 | 適切/疑問 | 自社株買い/配当/投資の整合 | ||
| Moat点検 | 強化/維持/毀損 | 競合の動き/価格転嫁の継続性 |
7. 「ニュースに振り回されない」:長期視点の具体術
- 毎日ではなく“四半期サイクル”で評価
- 値動きより“仮説の更新”を習慣化
- やらないことリスト(レバ過多・根拠なきナンピン・決算未読での売買)
8. まとめ:バフェットの核は“規律”
- 理解できるビジネスを
- 合理的な価格で
- 長く持つ規律を崩さない
これだけで、勝率は一段上がります。
用語ミニ辞典
Moat(経済的な堀)
競合が真似しにくい強み。価格決定力の源泉。
確認:値上げ後もシェア/粗利維持?
価格決定力(Pricing Power)
値上げしても顧客離反が少ない力。
確認:粗利率の維持×単価上昇
スイッチングコスト
乗り換えの手間・費用。
確認:解約率や移行コストの高さ
ネットワーク効果
利用者が増えるほど価値上昇。
確認:ユーザー増に伴うARPU/利用度の上昇
ROIC / WACC
ROIC=投下資本利益率、WACC=資本コスト。
確認:5年平均でROIC>WACCか
再投資余地
高IRR案件へ継続投資できる“伸び代”。
確認:投資計画/市場規模/新規事業IRR
資本配分 / 希薄化
配当・自社株買い・投資の配分と1株価値への影響。
確認:希薄化を上回る価値創出か
FCF / FCF利回り
自由に使える現金と時価総額比。
確認:恒常的にプラスか
EV/EBITDA
企業価値をキャッシュ創出力で割った倍率。
確認:同業比の理由づけ
逆DCF(バックワードDCF)
株価に内蔵の成長前提を逆算して妥当性を点検。
確認:事業現実と整合?
ベータ(β)/ レバレッジ
市場感応度と借入テコ。
確認:下落局面の耐性と金利感応度
コア/サテライト
長期の核と学習用小口の二層構え。
確認:銘柄数と比率の規律化
免 責
本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買推奨ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


